広島県立三次高等学校定時制 喜瀬 真理 先生
学年 | 高校1年高校2年高校3年 |
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教科 | 英語数学国語理科地歴公民保体家庭情報 |
科目 | 古典A |
単元 | 『太平記』「俊基朝臣海道下り」 |
実践報告のねらいとポイント
音読学習は,現代文・古典の両授業で行っているが,朗読という形で表現する学習は今回が初めてである。読み方を工夫し,旅情・情景等を表現できるかが課題となる。
朗読を通しての表現活動に初めて取り組むため,作品の歴史的背景や主人公の旅情,またそれらが込められた修辞の理解を深めることで,朗読の抵抗を少なくし,その後の意見交換など活発な表現活動が行えるように指導を心がけた。
朗読・他生徒の朗読鑑賞を通じて,七五調の韻律を楽しみ,お互いの表現に関しての気づきを挙げることで,道行文の歴史や特徴の理解を深めることができると考える。
ICT機器の活用として,朗読を録音するのにビデオカメラを利用した。自分をあらためて他者の視線から見ることで,生徒の対人関係能力を高める一つの方法として活用したいと考えた。自分の評価と他者の評価の比較,また,他者の評価を受けてからの自己評価の見直しがポイントとなる。
古典に朗読を取り入れる
題材への興味・理解が深まる
朗読の様子を撮影する
自分を映像で見ることができる
目次
使用した機器
- パソコン
- プロジェクタ
- スクリーン
- ビデオカメラ,三脚
授業について
毎時間,初めには既習事項の確認を行う。全6時間を通して同じパワーポイントファイルを使用した。そのため既習事項の確認では,同じスライドを利用した。
また,第1時間目から,最終的に朗読を行うことを伝えていた。朗読するにあたり,事前に朗読CDを聞かせたことがあったが,朗読CDは単調な読み方であったため,生徒たちは朗読CDより上手に読むことができると自信をもって取り組んでいた。
単元計画
単元計画(全6時間) | |
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第1時 | 時代背景を学ぶ。学習にはパワーポイントを使用する。 |
第2時~5時 | 段落ごとに内容を理解する。本文の音読,文法事項の確認などを行う。 |
第6時 | 朗読活動を行う。(本時) |
本時のねらい
- 七五調の韻律を楽しみながら朗読ができる。
- 修辞等の伝統的な言語文化への関心を高める。
- 道行文の主人公が感じた心情・風景への理解を深める。
本時の展開と実践内容
学習活動 | 指導上の留意点 | |
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導入5分 |
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展開35分 |
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まとめ5分 |
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朗読の評価シートについて
生徒たちは,一人ひとりの朗読を下記の項目で評価する。(ワークシートとして配布)
- 声の大きさ(段階評価)
- 姿勢・表情・動作(段階評価)
- 正確さ(段階評価)
- 表現の工夫(良い点・悪い点を記入)
撮影のポイント
- 再生時に一人ずつみられるように,生徒の入れ替わりの時間などは撮影しない。
- 朗読前に,生徒は読みたい段落を選び,朗読の際のポイント(登場人物の気持ちをどう表現したいか)などを述べてから,朗読する。
- 撮影中は,他の生徒は静かに聞き,朗読が終わって次の生徒との入れ替わりの時間にワークシートに評価を記入する時間を取る。
ICT機器を使う以前と比べてどのように変わりましたか
今年度は,全教科でICTを効果的に活用した授業づくりを行っています。教育センターで開かれる研修を受けたりしながら,勉強している段階です。どの教科の先生方も準備に苦労していますが,それよりも,生徒たちの意欲にやりがいを感じています。
先生の仕事について
授業用に掲示するための資料作りにインターネットを利用して調べる機会が増えました。時代背景をとらえるための資料作りは,写真を探したり,見せるものを用意するのが大変でした。パワーポイントを利用すれば,写真を大きく印刷する必要もないし,一度作ってしまえば,次の時間の振り返りにも使えます。
生徒たちの様子について
板書以外に,視覚的な資料が増えることで,もともと学習意欲のある生徒たちですが,より興味をもって取り組んでくれていると思います。発表や意見交換をする機会を増やすことによって,生徒たちのコミュニケーション能力が高まっているように感じます。
今後も,社会に出ていく生徒たちに,古典という教科を通して何ができるのか考えていきたいと思います。