光明学園相模原高等学校 笹原 健司 先生
学年 | 高校1年高校2年高校3年 |
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教科 | 英語数学国語理科地歴公民保体家庭情報 |
科目 | 社会と情報 |
海外への修学旅行中に、約400名の生徒が、現地でホストファミリーに対して「日本らしさ」を英語でプレゼンテーションする活動を行う。学習者の「気づき」から「発表」「記録」までをeポートフォリオとコラボレーションシステムを使い、教科横断型の学習になるようにした。
目的・目標
教科横断による「深い学び」
学校行事(修学旅行)による「体験」、「社会と情報」のプレゼンテーション、および「英語会話」をつないで、深く連続性のある学びを実現する。
自己肯定感を育む「日本らしさ」の追求
「日本らしさ」をテーマにし、自国の文化・精神を知ることで、日本人としての素晴らしさに気付き、自己肯定感の高揚を目指す。
主に使用した機器・アプリケーション
【機器】
- Google Chromebook
- プロジェクターおよび個人のスマートフォンなど(プレゼンテーション時)
【アプリケーション】
- G Suite for Education (Google社のクラウドサービス)
- Google Classroom(Google社のクラウドサービス)
- Google ドキュメント(文書作成アプリケーション)
- Google スライド(スライド作成アプリケーション)
本校では、生徒は入学時に G Suite for Education のIDを提供され、教科情報においてChromebookを使用して授業が行われている。また、個人のスマートフォンを「学びの道具」として利用することを推奨している。
上記写真は「社会と情報」より、オーストラリアでプレゼンテーションをするために、どのような手順で進めていくか説明している様子である。Googleスライドを電子黒板に投影し説明を行っている。生徒たちはChromebookを使い、電子黒板のスライドと学習ノートがクラウドで共有化されており、学び合いや振り返りができる仕組みとになっている。
実践内容
指導略案
教科 | テーマ | 時間数 | |
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1 | 社会と情報 | 「日本らしさ」について調べ学習 | 4時間 |
2 | 社会と情報 | プレゼンテーションとは(本時) | 2時間 |
3 | 社会と情報 | 「日本らしさ」リハーサルからポスターツアー | 4時間 |
4 | 英語会話 | プレゼンテーションの英文化 | 4時間 |
5 | 英語会話 | スピーチトレーニング | 4時間 |
6 | 現地発表 | Webによる学習教材の接続 | 約2時間 |
本時について
【指導目標】
- プレゼンテーションによって身に付けたい力を自ら選択し、学習活動に反映する。
- プレゼンテーションとは何かを具体的に知る。
【評価】
- 学内では、ルーブリックによる自己・他者評価。
- 修学旅行では、自己評価とアンケートによる評価。
本時のねらい
- 「わかりやすい」情報表現ができる。
- 「伝わる情報」を作成できる。
- 「聞き手」に合わせたプレゼンテーションができる。
本時の展開
内容 | 学習活動 | 指導上の留意点 |
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[導入] 社会が求める力 AI時代の働き方 |
「企業の採用時のアンケート」を見て、どんな力が必要か考える | 身に付けたい力は、自分で選ぶこと 意志ある学びを意識させる |
[座学] わかりやすい情報表現(目的・対象・工夫) |
実際のスライドを見て、違いを確認する。 | 3つの段階に分けて考える 1 説明する 2 納得させる 3 行動を起こす |
[座学] プレゼンの要素について学ぶ 内容と表現 |
ここまでの気づきをリミッツペーパーに記入 | 本時の学びの確認 頭と感情に伝えること |
[実習] リアルデータ登録・スライド作成 |
取材データのクラウド登録、プレゼンスライド共有 | 目的と目標を考えてスライドを作成すること |
実際の授業
eポートフォリオを使った「教科横断」型の学習
学習活動は、「社会と情報」から「英語会話」へ連続して行うようにした。また,「家庭科」や学外の支援者にも協力をいただいた。このような「連続性」と「広域性」を接続させるため、学習者の様々な「学び」や「情報」を一元管理する必要がある。
使用したシステムは、Google社の G Suite for Education と Classroom である。これらを使用した理由は、webアプリケーションならば機器に依存せず、いつでも、どこでも利用できるからである。今回の実践では、学習から発表・記録までをClassroomに登録した。
授業での取り組み
1年生の11月以降、調べた情報や実践して得た情報をClassroomにすべて記録する。情報をGoogleスライドにまとめていく。4、5名のチームでスライドをクラウド上に共有し、対面またはオンライン上でそれぞれが役割分担して全体のスライドを作成した。作成したスライドは、ルーブリックにより評価し、フィードバックを行った。
学習活動から得られる「気づき」「疑問」「提案」はGoogleドキュメントにすべて記録した。生徒からの質問は、Classroom内で共有し、授業中にスクリーンに投影して利用した。
Googleスライドでのプレゼンテーション資料の作成
スライドを共有して作成すると、お互いの意見をタイムリーに確認できる。フィードバックしながら作成が進めるので良い。
現地発表
現地での発表は、個人のiPadやスマートフォンを使って行った。これらの電子機器を使うことでプレゼンテーションではスマートフォンを見ながら紹介するチームが多かった。
発表を動画で撮影し、日本に戻り記録した動画、写真をClassroomにアップロードした。これらの学習データをクラウドに保存する仕組みをeポートフォリオと呼び、生徒たちの生涯学習の記録となる。
授業での効果
学習を進めていく中で、学びの姿勢に変化を感じた。対面で質問しても、手が挙がらなかったり、正解がなかったりするような「問い」でも、LINEなどで慣れているからなのか、Classroom や Google ドキュメントには、多くの気づきや意見を記入する。良いかどうかは別として、発信に積極的になる。修正が容易なことから「とりあえずやってみる」といったチャレンジを起こす場面が多くなった。
評価について
現地での発表の後は、複数の観点についてアンケートと自己評価により確認した。各質問に対して「よくできた・できた・できない・まったくできない」の4点法で実施した。「よくできた・できた」を肯定的な回答として集計した。
アンケート
アンケート結果 | |
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伝えたいことがつたえられたか | 肯定88% |
プレゼンテーションの準備は十分だったか | 肯定92% |
ファミリーの満足度 | 肯定94% |
アンケート結果を見ての通り、プレゼンテーション実施について、学習効果は高いと感じている。
さらに現地での発表を基に、「今後、学内で修学旅行の体験を発信してみたいか」といった質問について、400名中約70名の生徒が「yes」と答えた。制約のない中で自ら表現したいと思った生徒の数である。その中で、オーストラリアと日本の教育の仕組みについて発表したチームは、現地の生徒と情報交換したことで、日本の語学教育に疑問を持つようになった。帰国後に調べた結果、異文化を理解するために語学を学ぶといった、当たり前のことを再確認させられた。その後に、日本の英語教育の改善について提案された。
自己評価
自己評価では目標に合わせて観点を集計した。
観点 | 質問項目 |
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意思決定 | 人とは異なる意見でも、自分の考えを状況に応じて伝えることができた。 |
意思決定 | 自分の考えに責任を持ち、自分がすべきことを決定できた。 |
課題設定 | 旅行中「知りたいな」と思うことや「不思議だな、なぜだろう」と思うことがあった。 |
課題設定 | 何か分からないことや困ったことがあった時に、どこに問題があるかを考えることができた。 |
課題設定 | 課題解決の道筋を予測し、課題を解決するための計画を立てることができた。 |
協同 | 話し合いのときに、班の意見をまとめることができた。 |
協同 | お互いの良いところや違いを認め、協力することができた。 |
協同 | 異なる意見から得た気付きを生かして、考えを発展させることができた。 |
計画実行 | 課題解決に向けて、見通しをもって行動できた。 |
計画実行 | 自分の役割を自覚し、計画的に行動できた。 |
計画実行 | 失敗しても、もう一度挑戦し、最後までやり遂げた。 |
思考判断 | 収集した情報を関連づけて、比較したり、推測したりして考えを広げることができた。 |
思考判断 | 課題の原因や状況等を理解して、自分の考えを持つことができた。 |
思考判断 | 課題を解決するときに、何から始めれば良いか優先順位を付けることができた。 |
収集分析 | 解決したいことを、書籍やインターネット等を使って調べることができた。 |
収集分析 | 解決したいことを、電話やメール、インタビューでたずねることができた。 |
収集分析 | 収集した情報が正しいかどうかについて考えることができた。 |
収集分析 | 課題の解決に役立つ情報かどうかを考えながら、情報を集めることができた。 |
他者理解 | 異なる立場や考えを受け入れ、理解しようと思った。 |
他者理解 | 異なる立場や考え方の良いところを見るけることができた。 |
表現省察 | 相手や目的に合わせて、自分の考えを、根拠や明確に理解して表現することができる。 |
表現省察 | 学習の仕方や進め方を振り返り、次の学習や生活に生かすことができる。 |
集計結果は以下の通り。
集計結果 | |
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意思決定を問う質問 | 肯定92% |
協同性を問う質問 | 肯定90% |
他社理解を問う質問 | 肯定95% |
表現省察を問う質問 | 肯定95% |
「身に付けたい力は自分で選ぶ」最初に生徒自身が目標を立てて始めた。自己評価では、概ね達成したと感じているようであった。
これらの結果から、主体的に行動し、対話を通して深い学びを実践できたと感じている。
今後に向けて
ICTを使うと色んな事ができるが、「やり方」ではなく「あり方」を考えることが重要だ。教師自身が主体的に、何のために学ぶのかを深く考えて、ICTを取り入れることが、生徒の主体的な学びにつながると考える。この学習に関わった教師は、活動を通してシステムを習熟し、それぞれがオリジナルな学習システムにチャレンジしたいと感じたようであった。