ed-ict|授業でもっとICT活用

ed-ictは,学校現場におけるICT活用の実践報告や,関連情報に関心をお持ちの先生方を対象とした情報サイトです。

情報における総合実習でのICT機器の利用

帝京高等学校 三輪 清隆 先生

学年 高校1年高校2年高校3年
教科 英語数学国語理科地歴公民保体家庭情報
科目 社会と情報
単元 総合実習「ピクトグラムをつくろう」

 

グループでの対話協働型の授業を実施してコンセプトを作り,そのコンセプトを基にして各自がIllustratorを用いてピクトグラムを制作した。その後,作業の過程・話し合った内容・思考してきた事柄を1つにまとめて,ロイロノートを使って発表した。

 

 

主に使用した機器・教材・コンテンツ

  • パソコン
  • Adobe Illustrator(イラストを扱うPC用ソフト)
  • プリンター
  • iPad
  • ロイロノート(iPadアプリ)
  • AppleTV(iPad画面を投影するために使用)

 

単元計画

問題解決型の授業展開を通じて,多くのことを学習していくことになる。与えるテーマは教科書124ページにある「ピクトグラム制作」である。

第1時 ピクトグラムの使われ方を知る 学内を探索して,ピクトグラムを探し,その意味を考える。
第2時 班で共通のコンセプトを考える ブレインストーミング,KJ法の実習
第3時 各自が制作するピクトグラムをイメージする コンセプトマップの実習
第4~6時 ピクトグラム制作 Illustrator実習
第7~9時 発表資料制作 iPad,ロイロノート実習
第10時 発表 AppleTV,プロジェクタを利用

 

各時間での展開

第1時 ピクトグラムの使われ方を知る

ねらい

ピクトグラムについて,教員と生徒同士で共通の認識を持つことが目的である。教科書にもピクトグラムに関する説明文や例が掲載されているが,実際に使われている場面では,どんな工夫がなされているのかを理解していきたい。

授業

班別にまとまって学内にあるピクトグラムを探しに行く。持参する物は教科書124ページにある表をA4サイズに印刷した紙と筆記具である。班別にすることで,ピクトグラムを探しながら意見交換をし,お互いのピクトグラムに関する共通認識を深めることができた。

f:id:digitalmedia-d1g:20171218144803p:plain
f:id:digitalmedia-d1g:20171218145038p:plain
P124「ピクトグラムをつくろう」

第2時 班で共通のコンセプトを考える

ねらい

グループで話し合う場合のやり方としてブレインストーミング,KJ法を紹介することが目的である。なかなか意見を発言できない,声の大きい人がいた場合など,グループとしての意見を集約させたつもりが,特定の人の意見に偏ってしまうことがありがちである。

授業

班で共通のコンセプトを作ることを課題として提示する。さらにブレインストーミング・KJ法のやり方・ルールを紹介して,模造紙・付箋を配布する。ブレインストーミングまでは順調に進行することができたが,付箋のグルーピングやグルーピング完了後にまとめる段階で苦労していた。教員からはアドバイスはするが,生徒に代わってまとめるまではしないことを徹底した。

f:id:digitalmedia-d1g:20171217165043j:plain

ブレーンストーミングの様子

第3時 各自が制作するピクトグラムをイメージする

ねらい

作文なども思いついた先から書き出し,後から別の発想も出て書き足ししたために,ちぐはぐな文章になってしまうことある。コンセプトマップを利用すれば,提示資料を作成する前に,十分な検討をすることができ,結果として相手にわかりやすい提示資料を作成することができる。今回は各自が制作するピクトグラムが,なぜそうなったのかという点に関してしっかりとした思考をしてもらうことが目的である。

授業

コンセプトマップの作り方を例示して説明する。特に難しいとの声も上がらず,各自の実習作業に入る。机間巡視して作業している様子を観察するが,特に問題もなく進行していた。

f:id:digitalmedia-d1g:20171218143724j:plain

作成したコンセプトマップ

第4~6時 ピクトグラム制作

ねらい

Illustratorの使い方だけでなく,実社会での使われ方や,学習済みのRGBとCMYKによる色の表現方法の違いを復習して,Illustratorの設定項目の意味を理解する。また,描画するやり方について,ペイント系とドロー系があり,その長所と短所の復習とIllustratorがドロー系であることの確認をする。ドロー系描画ソフトでの描き方は,ペイント系のものと異なるので,最初は一緒に熊のイラストを描いて,感覚を持ってもらう。

授業

印刷業界ではIllustratorの利用が普及しており,製本する場合には大きな紙に同じページを複数印刷してから裁断して用いる。生徒たちの感覚では1ページずつ印刷するイメージが強いので,Illustratorの概念は興味深いようだ。色感覚についても,素人の感覚とプロとの違いがあることに気がつくと共に,Illustratorがプロの要求にも応えることができるという点で,使うことに期待を抱く生徒もいるようだ。一つ一つ段階を追って熊のイラストを描く段階では,ついていけなくなる生徒はほぼいない。各自の制作活動に入ると,得意,不得意の差や,自分が描きたい絵を追求する姿勢の差が出てくる。シンプルな図形で終わらせてしまう生徒もいれば,放課後も残って作業する生徒もいた。

第7〜9時 発表資料制作

ねらい

教科書88ページでは,ユーザーインターフェースが紹介されており,iPadを使っての実習はこの部分を学習する意味合いもある。今回利用するロイロノートの操作は単純であり,利用方法を習得するのに時間はかからない。また,一人1台のiPadが利用できるので,協働作業を行うのにも適している。

f:id:digitalmedia-d1g:20171218173443p:plain

P88「ユーザインタフェース技術」

授業

以前はiPadの操作説明にも時間をかけなくてはいけなかったが,今年度の授業ではiPadの操作そのものに迷う生徒はいなかった。ロイロノートの操作もすぐに馴染んだようで,お互いに写真を撮りあったり,トンネル機能を使ってコンテンツを交換し合っていた。ただ,その後の活動ではやはり差が出ることになった。積極的に話し合いをしてコンテンツを作っている班もあれば,協働作業がうまくできない班も見受けられた。

f:id:digitalmedia-d1g:20171218143735j:plain

ロイロノートで発表資料を作る様子

第10時 発表

ねらい

発表するまでに,リハーサルを何度も繰り返して,提示資料の完成度を上げたり(教科書103ページのPDCAサイクル),班員の役割分担をしっかり確認することが求められる。また,AppleTVを利用することによって,iPadを物理的なケーブルで接続しないでも,iPadの画面をプロジェクターに映し出すことができるということを学習する。

f:id:digitalmedia-d1g:20171218173701p:plain

P103「PDCAサイクル」

授業

発表前に時間を取って,リハーサルをする時間を作った。発表の本番では操作がわからないとか,発表を行う担当が不明だとかいったことは起きなかった。また,iPadはワイヤレスでプロジェクタに接続されているので,発表者がかわるたびにiPadが受け渡されていたのも興味深かった。

 

結果

今回の単元を通じて,グループで話し合うやり方,自分の考えをまとめていくやり方を実習することができたが,他の教科でも活用していけると,それぞれの教科内容を生徒自らが思考して理解していくことができるように思われる。Illustratorを活用した実習では,うまくイラストを描くことができれば,自分の考えを表現できるやり方が増えるのではないかと期待している。iPadおよびロイロノートを利用した実習は,自分の思考した内容を,言葉だけ(従来の教室ではこれしかなかった)でなく,静止画・動画・インターネットなどを利用して表現できることを学んだ。現在は普通教室での情報機器端末の利用は限定的であるが,今後情報端末の利用がもう少し自由になれば,授業そのものが変わってくるのではないだろうか。今後も情報科の授業で,こうした取り組みをしていることを積極的に情報発信していきたい。