長野日本大学中学・高等学校 井手上 将太 先生
学年 | 高校1年高校2年高校3年 |
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教科 | 英語数学国語理科地歴公民保体家庭情報 |
科目 | 生物 |
教科書 | 【生物311】 高等学校 改訂 生物 |
教材 | スクエア 最新図説生物 |
内容 | 第1章 細胞と分子 より 細胞の生命活動を支える細胞内構造 |
今回の実践で対象としたクラス(全3クラス)は,系列の日本大学への進学を志望する生徒を中心にしたクラスである。大学進学へは推薦入試を利用するため,入試では「生物」を利用しない生徒が多いので,ゆっくりと進めることができる。
また,今回の報告を行う学年では高校1学次から全生徒にiPadを貸与している。通常の授業で活用しているほか,総合学習の一環で,1年次の校外学習や修学旅行の行程をプレゼンテーションさせることもあるなど,iPadの活用を積極的に行ってきた。
実践のねらい
生徒にとって受け身の授業ではなく,参加型の授業になることをめざした。そこで,生徒が自ら調べ,必要な知識を深めることができるような授業展開を考えた。
生徒が自ら調べるためには,まず,教科書,教材を熟読する必要がある。さらに,調べた内容をまとめ,相手に伝えやすいように編集することで,必要な知識を深めることができる。あわせて,プレゼンテーション能力,すなわち情報発信する力の向上も図ることができる。
授業計画
今回の実践では,「各細胞内構造についてまとめよう。」という問いかけのもと,下記のような手順で学習をすすめた。最後に学習内容を確認するため,一問一答形式のまとめのテストを行う。
各自で調べ学習 |
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班
活 動 |
班を作り発表する構造を選ぶ |
発表資料をつくる |
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発表する |
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まとめのテスト |
下記にそれぞれの内容を記載する。
時間数 | 内容 | |
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1 |
生徒は各自で,教科書や資料集を使って,細胞内構造について調べたり,わかったことをまとめたりする作業を行う。 メモは細胞小器官ごとにするよう指示する。メモの方法は,ノート,iPadのどちらでも良い。 |
・各自で調べ学習 |
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3 | ||
4 |
3,4人ずつの班をつくり,各自が調べたものを共有し,どの構造を発表するかを話し合う。 班ごとにKeyNoteで発表資料を作成する。 原稿をそのままスライドに貼りつけるのではなく,図・絵・動画などを入れて,見てわかりやすく作るように指示する。 |
【班活動】 ・発表する構造を選ぶ ・発表資料をつくる |
5 | ||
6 |
プレゼンテーションは,各班5分を目安に発表を行う。 プレゼンテーションの仕方については,原稿ばかり見ていないで,聞き手に向けて話ができるように指導した。 まとめのテストを行う。 |
【班活動】 ・発表 |
7 |
授業の様子
各自で調べ学習
iPadに記録する生徒やノートに手書きで書き込む生徒など,それぞれのやりやすい形でまとめていた。iPadにまとめる生徒はあまりおらず,多くの生徒が自分のノートにまとめていた。iPadでは,図を書くのが難しかったようである。資料集を参考にしてまとめる生徒もいたが,資料集よりもインターネットで調べる生徒が多かった。
ノートを使った生徒は,調べた資料を参考に図を描くなどしている。
iPadを使った場合は,ノートに比べるとシンプルだが,1つの細胞小器官を1ページに箇条書きでまとめていることがわかる。
発表する構造を選ぶ/発表資料をつくる
20分ほど各班でそれぞれのまとめたものを見せ合い,その中でどの細胞小器官を発表するかを話し合った。それぞれの班で決めた細胞小器官について,発表の資料を作成した。 1台のiPadでKeynoteを利用して発表の資料をつくるので,
①発表内容をまとめる生徒
②原稿を考える生徒
③動画・画像をまとめる生徒
などに分かれて作業していた。
発表
発表は,各班5分程度でするように指示した。事前に各自で調べ学習していたため,初めて知るよりも,自分が理解した内容に間違いがないかを確認する機会になるはずだ。
発表で使われたスライドの一例
まとめのテスト
一問一答で語句を問うテストを行った。全クラス合計102人の平均点は,25点満点中の12点と伸び悩んだが,一方で18点以上の得点を取る生徒が40人近くいた。
まとめ
班ごとの発表と,まとめのテストを行うことを事前に伝えておくことで,真剣に取り組む姿勢をつくることができた。
1班あたり,3,4人の少人数にし,班で発表をするという目標を設定したことにより,参加していない生徒はほとんど見られなかった。iPadを使うことで,調べ学習の幅が広がり,生徒たちの好奇心がより簡単に引き出せたのではないかと思う。
今回の授業で,意欲的な生徒たちは,より学習を深めることができた。そうでない生徒たちも,生徒同士で話し合ったり,資料を準備することで協働的に学習することができていたのではないかと思う。
その一方で,班での作業中に人任せになっている生徒が少なからず見られた。机間巡視をすることで,少しはそのような生徒を減らすようにした。今後の課題として,そういった生徒に興味を持って積極的に参加したいと思わせるような指導をしていきたい。
発表の様子は,あまり人前で発表する機会がないせいか,声の大きさ,速さ,視線など,まだまだ物足りないところがある。本校では,授業以外でも発表する機会があるので,今回の授業での経験がそのときにも生きてくることを期待している。
授業時間を確保することは大変であるが,積極的に活動する生徒の姿が見られたので,有意義なものであったと思う。