執筆:天野由貴 監修:奥村晴彦
はじめに
この連載では,世の中に出回っている変なグラフを例に,どこが悪いかを解き明かしていきます。みなさんも変なグラフにだまされないよう,イトウさんとにゃんこさんと一緒に学びましょう。
人物紹介
奥村先生
言わずとしれた,すんごい先生。統計学,物理学,情報学に精通しており,LaTeXやRの本も執筆されている。にゃんこさんとイトウさんをやさしく指導してくれます。
にゃんこさん
わかりにくさを嫌う猫。グラフはわかりやすくしてほしいと常日頃思っている。3Dグラフは撲滅!撲滅!!
イトウさん
本連載では生徒役。すべてのことをわりとあっさり受け止めるタイプ。
前回までのあらすじ
前回は3Dグラフについて解説しました。
3Dグラフは撲滅,撲滅〜!
今回は円グラフについてです。
イトウさん,復習です。どんなだめな円グラフがありましたか?
中心がずれてるのとか。複数回答可のとかー・・・
そうそう,よく覚えてますね。今回は違う例について説明しますー
円グラフ
クジャクグラフ
出典:ニコニコアンケート より『「ポケモンGO」に関するアンケート』
https://enquete.nicovideo.jp/result/55#answers
円グラフでよく見かけるんですけど,こういう項目多すぎのやつは,円グラフにする意味はないように思います。
クジャクみたいですね〜。
円グラフはセグメントは多すぎないほうがいいですね。5~6個以内が適切かな。
クジャクグラフにならないように,ある程度項目をまとめる方法もあります。
さっきよりスッキリしました〜。
なんの割合か
円グラフってよく使われてるのですが,円グラフでないほうがいい場合がけっこうあります。
円グラフは,割合を示すのに向いてますよね。
全体の中での割合を示すのには向いているのですけど・・・。たとえば,この例を見てみましょう。
出典:総務省統計局:家計消費状況調査 2015年度[特定の財(商品)・サービスの1世帯当たり1か月間の支出] 全国・地方・都市階級別 総世帯
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&stat_infid=000031366120
これは『家計消費状況調査』から,1世帯1ヶ月あたりの支出のうち,家電購入のデータだけ※取り出して,円グラフしたものです。
※全国の世帯から抽出調査し,一世帯あたり一ヶ月間の支出を算出したもののうち「家電購入」の費用の割合だけ抜き出したものです。
これもクジャクみたいー。
それに,なんの割合を伝えたいものか,モヤモヤしますね・・・。
なんでモヤモヤするんですか?
たとえば,にゃんこさんももしかしたら使ってるかもしれない美容機器などは含まれてません。
はうっ
(つかってるんだぁ)
そうすると,その世帯で家電購入にあてている全金額のうちの割合とも言い難くなります。
そうですね。あくまでもここにあがってる項目だけのグラフですもんね。
(美容機器って結構高いんですよ・・・ボソッ)
家電購入全体の中で,エアコン購入代は2割くらいって言えないってことですね。
そうです!イトウさん,冴えてる~!
この場合は,棒グラフが向いていると思います。
何が多くて何が少ないかパッと見てわかりますし,金額の差もわかりやすいです。
棒グラフは,棒の面積で量を表しているので,このように金額を比較したいときは棒グラフがいいですね。
家計消費状況調査について,本例の具体的な調査内容を確認するには,政府統計サイトの「家計消費状況調査」のページから,「調査の概要」→「調査票」→「調査票B」を参照。
まとめ
今回の家計消費状況調査のグラフみたいに,色とりどりのグラフは問題ですね。
なにが問題なんですか?
まずダサい!たくさんの色をセンスよく使うって,プロでないとできないくらい難しいことなんですよ!
なるほど,ボクがやってもダサくなりそう・・・。
しかし,ダサいことよりもっと重大な問題が!
次回,解説します。
著者プロフィール
天野 由貴(アマノ ユキ)
大学職員。インストラクショナル・デザインの研究者。「情報デザインを意識したスライド作成入門」等の教材を作成・公開。ねこが大好き。 https://home.riise.hiroshima-u.ac.jp/~ten/
奥村 晴彦(オクムラ ハルヒコ)
三重大学特任教授。統計学,情報科学,情報教育の研究者。 第一学習社の「情報」教科書の著者の一人。 https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/