執筆:天野由貴 監修:奥村晴彦
はじめに
この連載では,世の中に出回っている変なグラフを例に,どこが悪いかを解き明かしていきます。みなさんも変なグラフにだまされないよう,イトウさんとにゃんこさんと一緒に学びましょう。
人物紹介
奥村先生
言わずとしれた,すんごい先生。統計学,物理学,情報学に精通しており,LaTeXやRの本も執筆されている。にゃんこさんとイトウさんをやさしく指導してくれます。
にゃんこさん
わかりにくさを嫌う猫。グラフはわかりやすくしてほしいと常日頃思っている。3Dグラフは撲滅!撲滅!!
イトウさん
本連載では生徒役。すべてのことをわりとあっさり受け止めるタイプ。
前回までのあらすじ
さて,今回は棒グラフです。
円グラフ難しいから,もう何でも棒グラフにしちゃえばいいと思ったんですよねー。
棒グラフもいろいろいかさまグラフがあるんですよ。
あからさまな いかさまグラフ
出典:大阪維新の会 サイト内『大阪府の有効求人倍率の改善』より
https://oneosaka.jp/pdf/panel/B-3_shi_A-4_fu.pdf
これは単なるネタグラフですね。
えっ,ぐい~んと上がってるんじゃないんですか?
縦軸の目盛りの幅が等間隔じゃないですね。 0.8~1.0と1.0~1.2がやけに間隔が空いてます。
つまり,上に行くほど数値が大きく見えるような印象操作ですね。
まんまとだまされちゃいました・・・。
こういうあからさまにおかしいやつでも,パッとしか見ないとだまされちゃいますよね。
グラフは目盛りをよく見ましょうね。簡単に直してみましょうか。
正しく描くとこうなりますね。
こうして見てもちゃんと増加してますよね。 別に無理に変なグラフにしなくていいのに・・・。
変なグラフにすることによって,信頼を失いますよね。
そうですよね。印象操作するようなところなんだ,と思われてしまいます。
変なグラフは使わないことだーーー!
データは正しく伝えましょう。
幽霊グラフ
第2回で,棒グラフは0から始まらないといけないことを説明しました。
※下記リンク『コラム 0の基準線』参照
棒の面積を比べるとおかしくなっちゃうんですよね。
そうです。おかしくなっているグラフがたくさんあります。
出典:『初任給とは 大卒5年連続増加、2018年春20万6700円』2019/6/3 日本経済新聞より
https://www.nikkei.com/article/DGXKZO45591500S9A600C1NN1000/
これもありがちなダメグラフです。0から始まってるけど,下のほうが切れて省略されてるんですね。
赤マルのついてるところですね。
これが足がないので幽霊グラフなんですね~。
ちょっと直してみましょうか。
ちゃんと描くとこうなります。
うーん,どんぐりのせいくらべ・・・。
これでは変化がわかりませんよね。だから棒グラフにするのはあきらめて,折れ線グラフにすればいいんです。折れ線グラフなら,ゼロから始まる必要はありません。
2011年後は震災の影響でちょっと下がってしまってるということを考慮して,2008年からのグラフにしてみました。
すご~い!変化してる~!!
(数値そのものは変わっていないよ,イトウさん)
まとめ
と,いうわけで何でも棒グラフにすればいいってもんじゃないんですよ,イトウさん。
ほんとですねー,よくわかりました。
しかし,棒グラフにはまだまだ問題があるものが多いのです。
次回も棒グラフについて説明します!
著者プロフィール
天野 由貴(アマノ ユキ)
大学職員。インストラクショナル・デザインの研究者。「情報デザインを意識したスライド作成入門」等の教材を作成・公開。ねこが大好き。 https://home.riise.hiroshima-u.ac.jp/~ten/
奥村 晴彦(オクムラ ハルヒコ)
三重大学特任教授。統計学,情報科学,情報教育の研究者。 第一学習社の「情報」教科書の著者の一人。 https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/