執筆:天野由貴 監修:奥村晴彦
はじめに
この連載では,世の中に出回っている変なグラフを例に,どこが悪いかを解き明かしていきます。みなさんも変なグラフにだまされないよう,イトウさんとにゃんこさんと一緒に学びましょう。
人物紹介
奥村先生
言わずとしれた,すんごい先生。統計学,物理学,情報学に精通しており,LaTeXやRの本も執筆されている。にゃんこさんとイトウさんをやさしく指導してくれます。
にゃんこさん
わかりにくさを嫌う猫。グラフはわかりやすくしてほしいと常日頃思っている。3Dグラフは撲滅!撲滅!!
イトウさん
本連載では生徒役。すべてのことをわりとあっさり受け止めるタイプ。
前回までのあらすじ
前回に引き続き棒グラフです
今回はいかさまグラフをいろいろ紹介します。手始めにこんなのを・・・・
グラフリテラシーも学べるニュース
出典:テレビ朝日 2010年 『池上彰の学べるニュース』より
ん?どこが変なのですか?
これは,縦軸の目盛りが90以上になると急に幅が大きくなってるんです
あっ,ほんとだ!
なので,ものすごくたくさんの補正予算がついているような印象に・・・
正しく描くとこうなります
これは印象操作レベルものですよね
ふつーに描けばいいのに・・・
そのとおり!
いろいろな省略グラフ1
0から始まってなかったり,途中省略したりする棒グラフはだめだという説明を前回しましたが,世の中には実にいろんなダメダメいかさまグラフがあります
棒グラフは棒の面積で量を比較してるので,切ったり省略したら,正しい比較ができなくなるんですよね
さっきのも,正しく比較できませんでした!
そうなんです,棒グラフはわりとそういうの,多いんですよ・・・
出典:2020/02/02 中国新聞
https://www.chugoku-np.co.jp/column/article/article.php?comment_id=609768&comment_sub_id=0&category_id=1183
上に省略線が!だめですね!!
そうですね,イトウさん成長してる~!
これ,省略線の上と下では,目盛りの幅も違いますね
棒の長さをよけい正確に比較できない~
ダメダメグラフじゃないですか!
データラベル(数値)が入ってるところと入ってないところがあるのも理由がわからないですね
特に有る無しの理由はなさそうですよね。出典が新聞なので,紙面のスペースの都合的な感じでしょうか・・・
きれいに描くとこうなります
(編集さんがデータをとりよせてくださいました ♪ )
棒の長さの印象が変わりました!
これで量を正しく比較できますね
そうだ!量の比較ではなく、時系列の変化を見るなら,折れ線グラフがいいですね!!
なんとイトウさんが前回の学習内容を覚えてる!!!
折れ線グラフで描いてみましょうか
やっぱり変化は折れ線のほうがわかりやすいです~
イトウさんがこんなに成長してるなんて・・・
棒グラフだと0のところは,データがないのか0なのかわかりにくいですが, 折れ線グラフはデータがあって0なんだ,欠損ではないんだ,ということがわかりやすくなります
なるほど~
いろいろな省略グラフ2
出典:2018.7.8 毎日新聞『防衛費 来年度、過去最大に 概算要求5兆円超か』より
https://mainichi.jp/articles/20180708/k00/00m/010/134000c
V字回復?的な?
これも下にも縦にも省略線が入ってます
出典もとである防衛省のグラフはこうなってますね
出典:防衛省『我が国の防衛と予算 令和2年度予算の概要』より
上記グラフは最新のものですので,比較対象には存在しない年度が含まれています。
https://www.mod.go.jp/j/yosan/yosan_gaiyo/2020/yosan_191220.pdf
そんなにV字じゃなかった・・・
1997年は平成9年だから,ちょうど始まりはさっきのグラフと一緒ですね
さっきのグラフは1998年から2008年は横ばいぽいから省略したんですかねぇ・・・
最近増えてることには変わりないです~
時系列の変化を見るのは,折れ線グラフがいいですね!
(イトウさんの口調を真似てみました)
奥村先生に真似された!
しかし,平成9年とかが斜めってるのが気ににゃる・・・
これは『平成』と『令和』が混ざっているので西暦で書いたほうがいいですね
たしかに令和30年くらいになるとややこしそう・・・
きれいに描くとこんな感じです
マーカー(丸いところ)も先程のグラフは装飾されてましたが,装飾はなくてもいいですね
ほんとだ,玉が光ってるみたいになってたんですね~
項目や軸の数値も見やすくなりましたし,きれいです!
きれいに描くとこんな感じですグラフがきれいなのはだいじなことです
グラフがきれいなのはだいじ!
まとめ
今回はいかさま棒グラフをいろいろ紹介しました
官公庁の資料とか新聞でもあるんですねぇ
そうなのです。一般的によく使うであろう棒グラフでも,あまり理解されていないのが悲しいですね・・・しくしく
あー,先生,泣かないで~!
この連載で,理解がひろまると嬉しいですね
次回から折れ線グラフについてお話します
著者プロフィール
天野 由貴(アマノ ユキ)
大学職員。インストラクショナル・デザインの研究者。「情報デザインを意識したスライド作成入門」等の教材を作成・公開。ねこが大好き。 https://home.riise.hiroshima-u.ac.jp/~ten/
奥村 晴彦(オクムラ ハルヒコ)
三重大学特任教授。統計学,情報科学,情報教育の研究者。 第一学習社の「情報」教科書の著者の一人。 https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/