執筆:天野由貴 監修:奥村晴彦
はじめに
この連載では,世の中に出回っている変なグラフを例に,どこが悪いかを解き明かしていきます。みなさんも変なグラフにだまされないよう,イトウさんとにゃんこさんと一緒に学びましょう。
人物紹介
奥村先生
言わずとしれた,すんごい先生。統計学,物理学,情報学に精通しており,LaTeXやRの本も執筆されている。にゃんこさんとイトウさんをやさしく指導してくれます。
にゃんこさん
わかりにくさを嫌う猫。グラフはわかりやすくしてほしいと常日頃思っている。3Dグラフは撲滅!撲滅!!
イトウさん
本連載では生徒役。すべてのことをわりとあっさり受け止めるタイプ。
前回までのあらすじ
今回は前回に引き続き円グラフのお話です。
セグメント多すぎのクジャクグラフはだめだよ~ってお話でした。
色とりどり過ぎもだめなんです~。
色とりどりグラフ
色とりどりグラフは,沢山の色を使いこなすのが難しくてダサくなりがちなんですよね。
はい,ダサいだけが問題じゃないってお話をします。
出典:内閣府『平成30年版 子供・若者白書(全体版)』より
https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h30honpen/s4_4.html
これは,母親と子供の1週間あたりの対話時間の割合を表したグラフです。
わー,きれ〜い。
こういう色とりどりグラフは,人によってはこんなふうに見えてるかもしれません。
これはChromatic Vision Simulatorという,赤と緑の区別のつきにくい人(※)の色の見え方を体験できるシミュレータで,さきほどのグラフを見てみたものです。
※日本人男性では5%ほどいる
なんか似たような色でわかりにくくなったような・・・。
『70時間以上』と『不詳』の境目がどこなのか,わかりにくいですね。
こういう場合は,別に色分けしなくても,セグメント(扇形)の境界さえはっきり分かればいいですね。
こんなふうにセグメントが濃い色なら白い線,セグメントが薄い色なら黒い線とかで区切るだけで良いですね。
時間の分け方も4時間までと5〜9時間をまとめたことで,他のセグメントと揃えられましたね。
わかりやすくなったし,カッコいい!
元のは変なグラデーションもついてましたしね。
余計な装飾は必要ないですね。
ケーキグラフ
変な円グラフと言えば,ときどき見かけるこういうの・・・。
出典:国立がん研究センター中央病院『通院治療センターについて』より
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/outpatient_treatment_center/
わー,ケーキみたい!
3Dな上に切れてるという・・・こんな風にされたら比較のしようもないですよね。
これももうグラフとは言いたくないですね・・・しくしく。
わー!先生,泣かないで~。
奥村先生が泣くので,切れてるケーキグラフも撲滅ということで!
撲滅!撲滅~!!
まとめ
思ったんですけど,もうなんでも棒グラフにしちゃえばいいんじゃないですか。
円グラフが悪いわけじゃないですけど,注意すべき点が多いのは確かですね。
棒グラフだって,注意すべき点がたくさんあります。
次回は棒グラフについて解説します!
著者プロフィール
天野 由貴(アマノ ユキ)
大学職員。インストラクショナル・デザインの研究者。「情報デザインを意識したスライド作成入門」等の教材を作成・公開。ねこが大好き。 https://home.riise.hiroshima-u.ac.jp/~ten/
奥村 晴彦(オクムラ ハルヒコ)
三重大学特任教授。統計学,情報科学,情報教育の研究者。 第一学習社の「情報」教科書の著者の一人。 https://oku.edu.mie-u.ac.jp/~okumura/