学校のネットワーク環境について前編後編の二回に分けて説明します。前編では,一般的なインターネット環境について,後編には学校でのネットワークについて扱います。
学校のネットワークの整備
現在では,ほとんどの学校でインターネットが利用できるようになっています。
学校のネットワークの整備はどのようにして進められたのでしょうか。
まず初めに,1994年から3年間,商産業省(現在の経済産業省)と文部省(現在の文部科学省)が共同で,「ネットワーク利用環境提供事業(100校プロジェクト)」が行われました。100校プロジェクトでは,一般公募で選ばれた111の学校や施設をインターネットにつなげて,学校でどのようにインターネットが使えるのか可能性を追求するというプロジェクトが実施されました。
その後,2001年に日本政府による「e-Japan戦略」がスタートしました。
e-Japan戦略とは,日本が世界最先端のIT国家となるようにかかげられた戦略のことで,その中には,教育機関の情報化・人材育成の強化が含まれていました。
e-Japan戦略は2005年度までを目標としていたため,2006年度からは2010年度に向けた新たなIT国家戦略として「IT新改革戦略」となりました。
日本政府の方針ならびに,各省庁での政策等を取りまとめるかたちで,学校に関することは,2011年4月に文部科学省より「教育の情報化ビジョン」の公表となりました。
教育の情報化ビジョンが公表されたのは,新しい知識・情報・技術あらゆる領域において,子どもたちを取り巻く環境の変化に伴い,教育も変化していく必要があるからだとされています。
その後も,2013年には総務省より「フューチャースクール推進事業」によりICT機器を使ったネットワーク環境を構築し,学校現場における情報通信技術面を中心とした課題を抽出・分析するための実証研究が行われ,2014年には文部科学省は総務省と連携し,「学びのイノベーション事業」を行われました。
2014年には「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画」として地方財政措置が講じられました。
教育のIT化に向けた環境整備4か年計画パンフレット 学校のICT環境を整備しましょう!(平成26年度) (PDF)
この予算はパソコンや,電子黒板やプロジェクター,インターネット回線の整備ならびにICT支援員の配備などに利用されます。インターネット回線を提供する業者側も,こういった背景により学校のためのプランを用意しています。
学校のネットワークの整備で留意する点
学校のネットワークを整備する際には,学校の規模や想定される利用法に合わせたプランの選択が必要になります。インターネット回線を引くときには下記のような点を参考にしてください。
事前に調べておく点
- インターネット接続に使用する機器(パソコンやタブレット端末)の台数
- 何に使用したいのか(授業中に動画をストリーミング再生したいなど)
- 接続の方法は有線か無線か
契約時に留意すべき点
- 接続できるコンピュータの数はどのくらいか(IPアドレスが付与できる数)
- 回線速度はどのくらいか(使用頻度や量を事前に確認しておくこと)
- セキュリティ対策はどのようにできるのか(フィルタリグ機能はあるか)
- サポート体制はどうなっているか(緊急時の対応,メンテナンス作業の頻度など)
学校にインターネット回線が整備されていても,利用方法に適していないといろいろな不具合が起きます。一度,施工してしまうと変更するのは大変ですが,本当にやりたいことが可能なのかどうか,改めて見直すことも必要でしょう。
今までこんな経験はありませんか?
- 特定のWebサイトにアクセスできない。
- インターネット上のファイルがダウンロードできない。
- メールが届かない。
- 授業中に通信速度が遅くなる。
特定のWebサイトにアクセスできない場合
学校の場合,不適切なWebサイトへアクセスしないようフィルタリングが設定させている場合があります。
(プロバイダの提供するファイヤーウォールやセキュリティ対策ソフトでフィルタリング設定が可能です。)
インターネット上のファイルがダウンロードできない場合
こちらもフィルタリングによりダウンロードできない可能性があります。
また,ダウンロードできたとしても,セキュリティ対策ソフトによって削除されてしまう場合があります。
メールが届かない場合
メールに添付ファイルがある場合は,添付ファイルの容量の上限を超えている。もしくは,メールのフィルタリング機能により削除されていることがあります。
それ以外にも,自分が送信するメールがhtml形式になっている場合は,相手側に配慮してテキスト形式に設定しておくのが好ましいです。
授業中に通信速度が遅くなる
同じ時間帯に複数の人が接続した場合,回線が混み合っていることが考えられます。インターネットを使っていなくても,ネットワーク内が混み合うことも考えられますので,動画など通信量が多いデータはなるべくネットワークを介さない方がいいでしょう。そのほか,無線の場合は,電波が届きにくい場所になっていたり,複数の無線機器があり電波が干渉していることも考えられます。
学校のネットワークが整備されたら
では,学校からインターネットに接続できるようになると,どのようなことが可能になるのでしょうか。
学校でも,インターネットを介してさまざまな情報を取得して教育に活用する環境が整いつつあります。
各教科書会社が提供するデジタル教科書は,その中に用意されたコンテンツ(動画を見たり,背景資料を見たり)が授業中に利用できます。
学校の時間割や連絡事項などを管理するソフトを導入すれば,学校と家庭がつながることも可能です。
地域によっては,教育委員会が管理ソフトを導入し,学校間や地域間とのつながりをもつことも始まっています。
インターネット回線を整備するだけでなく,利用するための整備も大切な取り組みです。
データで見る導入状況
都道府県を選択すると,高等学校における各ネットワークの整備率を表示します。
普通教室のLAN整備率
普通教室の無線LAN整備率
数値データは平成28年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果より
出典 学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果:文部科学省