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数学の授業において図形を扱う場合のICT機器の利用について

帝京高等学校 三輪 清隆 先生

学年 高校1年高校2年高校3年
教科 英語数学国語理科地歴公民保体家庭情報
科目 数学B
単元 空間ベクトル

 

実践報告をするにあたって

数学の授業において図形を扱うことは避けることができない。図形問題を解く過程を説明する際には,問題文が対象としている図形を提示して説明しなければならない。従来の授業であれば,教科書に掲載されている図形を黒板に板書して,色チョークを使って見るべき図形のポイントを指示していたが,このやり方では板書するのに時間がかかることや,別の見方を紹介する際には,色チョークの部分だけを消すか,一から図形を書き直さなければいけなかった。また,作図の仕方を示す際には,大きな板書用のコンパスや定規を利用していた。このやり方だと,大きなコンパスや定規を使いこなすのに練習が必要になるばかりか,どうしても陰になって見づらくなってしまう座席位置の生徒が出てしまった。こうした従来のやり方だと不都合が生じる点を解消するために,ICT機器を利用することを思いつき実践してみた。また,実践するにあたってどんな準備が必要なのかも紹介していきたい。

先生のもやもや①

図形の板書に時間がかかる
書き直すのが大変

↓

プロジェクターを黒板に映写する

図形の板書は不要
書き直しが簡単

先生のもやもや②

大きなコンパスや定規は扱いにくい
生徒の座席位置によっては見えにくい

↓

作図の授業展開にOHCを利用する

手元を見ながら作業できる
生徒に背中を向けない

 

目次

 

 プロジェクターを黒板に映写する

教科書・問題集に掲載されている図形をスキャナでコンピュータに取り込む。複数の問題・図形を投影する場合,PowerPointのスライドに1枚ずつ張り付けておくと便利である。図形を黒板に投影して色チョークで板書をすると,生徒に示したいポイントがわかりやすく見せることができるばかりか,別の見方を示す場合には,板書した部分を消してもプロジェクタで映写している図形には影響がないので,何度でもやり直すことができる。

必要なもの
  • コンピュータ
  • プロジェクタ(コンピュータとの接続ケーブル等含む)
  • スキャナ(もしくはスマホでも可)
①教材作成

今回は教科書に掲載されている図形をスキャナでコンピュータに読み込み,図形の部分を切り抜いて,PowerPointのスライドに貼り付けていった。

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教科書をスキャナでパソコンに取り込んでPowerPointに貼り付ける
②教材を準備する

本校は普通教室にプロジェクタがないので,授業で利用しようと思ったら,機材を自ら準備しなければいけない。準備した教材は以下の通り。

  • プロジェクタ(載せる台)
  • プロジェクタに接続するパソコン
  • 接続するための各種ケーブル
  • 提示する教材のデータが入ったUSBメモリ

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移動の様子



③機器の設置

準備室から教室まで移動して設置が完了するまで,約9分かかった。機器の設置が苦手な先生である場合,もう少しかかるかもしれない。

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設置した様子
④黒板に投影する

 プロジェクタが古いので,最新のものに比べると見劣りしてしまうかもしれないが,後ろの方の席からでも十分に見ることができる。また,電子黒板機能がなくとも,普通にチョークで映像の上から描くだけで,十分説明していくことができる(逆にこの方が早いような気がする)。

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黒板に投影して書き込んだ様子
今後の課題

投影する教材については,今回は教科書に掲載されているものをそのままスキャナで取り込んだが,図形についても自分なりに工夫して描いたものを投影できると,授業の効果も上がるのではないか。また,教材機器設置に時間がかかることが一番の問題である。やはり普通教室にもICT機器が常備されていることが望ましい。

作図の授業展開にOHCを利用する

OHCは別名教材提示装置と呼ばれ,教科書・図表・写真など紙媒体のものを提示するのに使われている機器である。本校ではコンピュータ教室に常備されていて,生徒席からはセンターモニタと呼ばれる2人で1台を見るタイプのモニタに映し出されるようになっている。今回は作図していく様子をOHCで撮影をして,生徒たちが身近で作図されている様子を見られるようにしていこうというものである。

必要なもの
  • OHC(教材提示装置)
  • 大型テレビ(接続ケーブル含む)
①教材作成

想定している授業は基本的な作図なので,特に白紙の紙が1枚あればよい。状況によって,準備するものが異なってくる。

②機材の準備

OHCが常設されている教室なので,機器の切り替えを行うだけで利用することができる。

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OHC教室の様子
③授業を行う

通常のコンパス・定規を使って作図を行うので,手軽であり繰り返すことも簡単にできる。

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授業中の様子

二つの方法を使い分けるポイントは?

二つの方法の大きな違いは設備にあります。一つ目の場合は,昔ながらの教室でプロジェクタを利用した授業を展開しようとしたときに,自ら設備を構築することによって,可能とするものです。二つ目は,PC教室という設備の整っている環境で実施する場合の例になります。ICT機器を活用したいと思われる先生方は,自校の環境に合わせてアレンジしていくことができるのではないでしょうか。

今のところ,本校では情報端末の学内利用に関して制限がかかっていますが,一人一台の情報端末の利用ができる環境があれば,教材配布・提示は直接生徒の情報端末に配布・提示すればよいのです。プレゼンテーションにしても提示資料を大きく映し出す必要はなく,細かい図表や文字を確認したい場合には,手元の情報端末に資料をダウンロードして見ればことはたりると思いますし,家庭での復習にもその方が便利でしょう。外部のセミナーなどでは,すでにそうしたタイプが増えてきています。

ICT機器を利用した時間の有効活用とは?

今回は図を使った授業を展開する際に,図を黒板上に書き写す時間が節約できるということを示しましたが,説明に要する数式や文章にしても,板書を終えてから生徒がノートをとるまで待たなければいけません。生徒がノートをとる時間を節約するのに,板書したものを教員が写真を撮って,授業後,撮った写真を生徒と共有するやり方もあります。わたしの場合,生徒と共有する方法として,Google Classroomを使ってみました。

今後の展望をおしえてください!

今後は,普通教室で生徒たちが手元に持っている端末に,こうした映像が映し出されると,より使いやすくなるでしょう。また,こうした映像は生徒たちが,各単元の内容を理解していくのに適していますが,復習する際にはこうした映像を見ることができません。Youtubeでは,教育関係者が映像を公開していますが,学校の授業を公開するには抵抗感があります。プライベートクラウドを活用した形で,こうした映像を復習のために活用できるようにしていきたいと考えています。

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